治療できるチャンスがあるから拡大新生児マススクリーニングは悩まず受けてほしい

里帰り出産した病院で受けた拡大新生児マススクリーニング(以下、拡大マス)で、長女の咲那(さな)ちゃんが脊髄性筋萎縮症(SMA)ということが判明した理弘さんと紗代さん。生後すぐに発症し、病名がわからないまま、拡大マスの結果が出るまでの2週間が長く感じられたと話してくれました。
取材協力:SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会

夫婦ともに医療従事者なので、SMAという病気のことは以前から知っていましたし、拡大マスの説明を受けた時も検査を受けることについて、迷いはありませんでした。

生まれてすぐに筋緊張の低下があり、何かの病気であることはわかったのですが、病名がわからず、不安な状態が続きました。SMAだったら治療薬があることは知っていたので、拡大マスで陽性と聞いたときは、治療が始められることに期待が持てました。

陽性と聞いたその日のうちに、治療ができる病院へ転院となりました。そこで担当してくださった先生はとても親身になって治療の説明をしてくださり、治療効果を最大にできるよう治療戦略へのアドバイスもいただけたので、安心して治療を受けることができました。
私たちは、里帰り出産した県が早くから拡大マスを実施していたので、スムーズに受けることができました。

全国どこでも赤ちゃんは生まれているのに、都道府県ごとに受けられる県、受けられない県があるのはおかしなことだと思います。また、拡大マスを実施している県でも、一部の病院じゃないと受けられない、受けたいと思っても、病院を選ばないといけないというのも、おかしなことだと思います。
せっかくの治療の機会を逃すことがないよう、拡大マスを希望する人にはどこでも受けられる体制を整えてもらえたらと思います。

親子3人で楽しく暮らしている、仲睦まじいご一家。SNSでの情報収集や情報発信にも余念がないという、普段の様子をお聞きしました。

平日は、ほぼ毎日リハビリがあるので忙しくしていますが、日々できることが増えていくのをみるのはうれしいです。
休日は、家族3人で買い物に行ったり、おじいちゃん、おばあちゃんとご飯に行ったりしています。
一度だけですが、家族で旅行にも行きました。荷物が多かったので車移動でしたが、新幹線や飛行機にも乗せてあげたいです。ディズニーランドにも連れて行ってあげたいです。

SNSで同じような状況にあるお母さんたちとつながったり、自分自身も情報を発信したりして、経験を共有しています。
もし、2人目の子ができたときSMAだったら、と考えることもありますが、たとえそうであったとしても、発症前に治療を受けることができるかもしれないし、きっと娘を支えてくれる存在になると思うので、前向きに考えたいと思っています。

※写真はご家族の許可を得て掲載しています。

用語解説:
拡大新生児マススクリーニング(拡大マス)

新生児マススクリーニング検査は、生後4~6日に赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取して先天性代謝異常や内分泌疾患がないかを調べる検査です。従来の新生児マススクリーニング検査では20の先天性疾患を調べることができ、すべての赤ちゃんが無料(公費)で受けられます。
近年は、「拡大新生児マススクリーニング検査」として、新生児マススクリーニングにSMAやSCID*などの検査が追加できるようになりました。追加の検査が受けられるかどうかは、都道府県や出産施設ごとの判断になります。
拡大新生児マススクリーニング検査は、追加マススクリーニング(追加マス)、付加マススクリーニング、オプショナルスクリーニング、NBS(New Born Screening)などと呼ばれることもあります。
*SCID:重症複合免疫不全症(以下SCID):生まれつきの免疫系の異常により、感染に対する抵抗力が低下する病気で治療法があります。

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