生まれてすぐに治療を受けることができ、今は病気を忘れるくらいに元気

拡大新生児マススクリーニング(以下、拡大マス)で、3人兄弟の末っ子の次女が脊髄性筋萎縮症(SMA)ということが判明した近藤さん。早期に治療を受けて、今は、お兄ちゃん(長男)、お姉ちゃん(長女)に負けないくらい元気いっぱいに過ごしています。「治療をしたことも忘れてしまうぐらい」と話してくれた母親の菜緒美さんと、父親の剛士さんに、拡大マス陽性の連絡が来てからのことを伺いました。
取材協力:SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会

妊娠して半年ぐらいの時に拡大マスの案内チラシをもらいました。心配性なので、何もないことの確認もできるし、受ける方がいいかなぐらいの気持ちで受けました。

子どもは3人とも近くのクリニックで出産しました。出産して1週間後の金曜日に、「拡大マスの結果が陽性でした。こちらで病院を予約したから月曜日に行ってください。必ず行ってください」と産院から電話があったのです。
「SMA」と言われても、そんな病気は知らなかったですし、何かの間違いかもと思いました。
土日にSMAの症状についてインターネットで調べたのですが、いくら調べても、うちの子が本当にこの病気なのかわかりませんでした。何もわからず、不安な土日でした。

発症する前に治療を受け、今では他の子と同じように、毎日保育園に通っているようです。
治療前と治療後の心境をご両親に伺いました。

治療法があると聞いても、不安が大きすぎて、なかなか安堵することはできなかったです。仕方のないことだけど、先生も「100%大丈夫ですよ」なんて言えないですしね。くよくよしても仕方がない、希望があるかもと気持ちを切り替えました。
今はもう病気だってことは忘れてしまうぐらい元気です。この先のことを考えると心配がないわけではありません。何歳頃に病気のことを話せばいいのかな、将来、旦那さんになる人を連れてきたら、子どもを持ちたいと言われたら…など、つい考えてしまいます。先のことは誰にもわからないので、いろいろなことを想定しながら、次女にとってのベストを考えて育てていけばいいと思っています。

いちばん上の子がこういう病気だったら、私たちは下の子は産まないでおこうという選択をしたかもしれないと思うのです。でも、拡大マスで早期に治療ができれば、うちの子みたいに普通の子と同じように過ごせる。そういう子が増えれば、みんな幸せですし、次の子も産んでみようという選択もできると思います。
もし、拡大マスを受けていなかったら、こんなに元気に動き回っているこの姿がみられなかったのかな、と考えてしまうときもあります。だからこそ、拡大マスは全国どこでも、誰でも受けられるようになるべきだと、心からそう願っています。

※写真はご家族の許可を得て掲載しています。

用語解説:
拡大新生児マススクリーニング(拡大マス)

新生児マススクリーニング検査は、生後4~6日に赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取して先天性代謝異常や内分泌疾患がないかを調べる検査です。従来の新生児マススクリーニング検査では20の先天性疾患を調べることができ、すべての赤ちゃんが無料(公費)で受けられます。
近年は、「拡大新生児マススクリーニング検査」として、新生児マススクリーニングにSMAやSCID*などの検査が追加できるようになりました。追加の検査が受けられるかどうかは、都道府県や出産施設ごとの判断になります。
拡大新生児マススクリーニング検査は、追加マススクリーニング(追加マス)、付加マススクリーニング、オプショナルスクリーニング、NBS(New Born Screening)などと呼ばれることもあります。
*SCID:重症複合免疫不全症(以下SCID):生まれつきの免疫系の異常により、感染に対する抵抗力が低下する病気で治療法があります。

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